【コラム】ppiで設定したのにdpi表示?Windowsフォトアプリ等の謎と解像度メタデータの真実

「Photoshopでちゃんと300ppiに設定したはずなのに、Windowsのフォトアプリで画像の詳細情報を見たら『295dpi』とか『300dpi』って表示されてる!なんで?ppiはどこ行っちゃったの?」

こんな経験、ありませんか?特に課題などで画像解像度に気をつけている方のほど、この表示の違いに戸惑ってしまうことが多いようです。でも安心してください。これは多くの場合、設定ミスやデータがおかしくなったわけではありません。

この記事では、なぜこのような表示の「ずれ」のように見える現象が起きるのか、そして解像度情報をどう理解すればよいのかを、スッキリ解説します!

なぜppi設定がdpi表示に? – 主犯はメタデータの「表示ルール」

デジタル画像ファイル(JPEGやTIFFなど)には、撮影日時やカメラの設定などと一緒に、「解像度」に関する情報もメタデータとして記録されています。代表的なメタデータ規格には「Exif(エグジフ)」があります。

ここでポイントとなるのが、メタデータにおける解像度の記録方法と、それを見るソフトウェアやOSの「表示の仕方」です。

編集ソフトでの設定 (例: Photoshop): Photoshopなどの画像編集ソフトで「300 ppi (pixels per inch)」と設定すると、これは「1インチあたり300ピクセルで画像を構成しますよ」という意味になります。この設定を行うと、画像ファイルには「解像度の数値:300」と「その単位:インチ」という情報がペアでメタデータに書き込まれます。

各種ソフトウェアやOSでの表示のされ方: 編集ソフトで設定したこのメタデータ情報は、さまざまな場面で参照されますが、その際の「表示ラベル」が混乱の原因になることがあります。

  • Windowsフォトアプリ: アプリで画像を開き、詳細情報を表示すると「〇〇 dpi」と表示されることがあります。
  • Windowsのファイルプロパティ: 画像ファイルを右クリックし、「プロパティ」を選択、次に「詳細」タブを開くと、「イメージ」セクションに「水平方向の解像度」および「垂直方向の解像度」という項目があり、ここでも単位が「dpi」で表示されます。
  • macOSのプレビュー.app: 画像を開き、「ツール」メニューから「インスペクタを表示」(または command + I)を選択し、「詳細情報インスペクタ」(iマークのタブ)の中の「イメージDPI」などの項目で、ppiではなくdpiで表示されることがあります。(ただし、macOSではppiと表示することも比較的多いです。)
  • その他の画像ビューアソフト: IrfanView、XnView MPといったサードパーティ製の画像ビューアソフトでも、画像のプロパティや情報表示機能で確認すると、Exif情報を基に解像度が「DPI」や「Resolution (dpi) 」として表示されることが一般的です。

これらのソフトウェアやOSの機能の多くは、メタデータに記録された「インチあたりの解像度数値」を参照します。そして、それを画面に表示する際に、歴史的経緯や慣習から「dpi (dots per inch)」というラベル(呼び名)で表示する仕様になっていることが多いのです。

つまり、あなたがPhotoshopで「300 ppi」と設定した事実は、メタデータに「数値:300 / 単位:インチ」としてしっかり記録されています。それがWindowsのファイルプロパティや各種ビューアソフトなどでは「300 dpi」と表示されているだけで、ppiで設定したものがdpiに勝手に変換されてしまったわけではないのです。単に、ソフトウェアが表示する際の「呼び名」が異なっているだけ、と考えてください。

(補足: 稀に「295 dpi」のように微妙に数値がずれることがありますが、これはソフトウェアがメタデータを書き出す際の丸め処理などが影響することがあり、これも多くの場合、画像の品質に致命的な影響を与えるものではありません。重要なのは、意図したピクセル数が確保されているかと、編集ソフト上でのppi設定値です。)


「ppi」と「dpi」- もう一度おさらい、そして大切なこと

元の記事でも解説していますが、ここでもう一度おさらいしましょう。

  • ppi (pixels per inch): 主に画面やデジタルデータ上でのピクセル密度を示します。デジタル画像のきめ細かさの目安となり、画像編集ソフトで設定する値です。
  • dpi (dots per inch): 主に印刷時の物理的なインクの点(ドット)の密度を示します。プリンターの性能(どれだけ細かくインクを吹き付けられるか)を示す数値としても使われます。

そして、非常に大切なポイントを思い出してください。

画面で画像を見る場合、実際にその画像の見た目や精細さに直接影響するのは、画像の総ピクセル数(例: 幅1920ピクセル × 高さ1080ピクセルなど)です。メタデータに記録されているppiやdpiの値自体は、画面表示の見た目を直接的に変えるものではありません。

印刷する場合には、このppi設定が重要になります。例えば、同じ3000ピクセル × 2000ピクセルの画像でも、300ppiで設定されていれば約25.4cm × 16.9cmで印刷され、72ppiで設定されていれば約105.8cm × 70.5cmと大きく印刷されます(もちろん、72ppiの方が粗い仕上がりになります)。


Windowsフォトアプリ等の「dpi表示」は気にしなくていいの?

結論から言うと、Photoshopなどの編集ソフトで意図したppi値(例:300ppi)とピクセル数が正しく設定・保存されていれば、Windowsフォトアプリやファイルのプロパティなどで表示が「dpi」であっても、過度に心配する必要はありません。

前述の通り、これは多くの場合、表示上のラベルの問題です。それらのソフトが表示している「dpi」という数値は、あなたが設定した「インチあたりのピクセル数」を指していると理解して大丈夫です。

皆さんが仕事や学校の課題などで画像を提出する際は、以下の点を確認しましょう。

最終確認は編集ソフトで: Photoshopであれば、「イメージ」メニュー > 「画像解像度」を開き、「解像度」の項目が意図したppi値(例:300 ピクセル/インチ)になっているか、そして「ピクセル数」の幅と高さが要件を満たしているかを確認しましょう。ここが正しければ問題ありません。


【重要】プリンターの「dpi」と画像のメタデータ「ppi/dpi」は別モノ?

ここでさらに一歩進んで、混乱を招きやすいもう一つのポイントをクリアにしておきましょう。それは、プリンターの性能を表す「dpi」と、画像ファイルに記録されている解像度情報(ppiや、それがdpiと表示されるもの)は、意味合いが異なるということです。

プリンターのカタログなどで「4800dpi」や「2400dpi」といった表記を見たことがあるかもしれません。このプリンターのdpi値は、「プリンターが1インチあたりにどれだけ微細なインクのドットを物理的に配置できるか」というプリンターの印刷能力・細かさを示しています。

一方、画像ファイルのメタデータにある解像度情報(例えば300ppi、あるいはそれがフォトアプリ等で300dpiと表示されるもの)は、その画像データが1インチあたりいくつのピクセルで構成されているかという情報です。

例えば、「300ppiの画像データ」を「4800dpiのプリンター」で印刷する場合、プリンターは300ppiの画像情報を元にして、自身の持つ4800dpiの能力を活かして、より滑らかで美しいグラデーションやディテールを表現しようとします。画像データ側の解像度がプリンターの解像度と同じである必要はありません。

つまり、Windowsフォトアプリやファイルのプロパティで表示される「〇〇dpi」は、あくまで「その画像データに記録されているインチあたりのピクセル数」であり、プリンターの機械的な性能を示すdpiとはレイヤーの違う話なのです。この違いを理解しておくと、さらに混乱が少なくなるでしょう。


まとめ – 正しく理解して、解像度と上手に付き合おう!

Photoshopなどでppi設定したものが、Windowsフォトアプリやファイルのプロパティなどでdpiと表示されるのは、多くの場合、ソフトウェアやOSのメタデータ表示ルール(慣習的なラベル付け)によるものです。

つまり、Windowsフォトアプリ等で見かける「dpi」という表示は、あなたが編集ソフトで設定した「ppi」の数値が、表示のルール上「dpi」という言葉で示されているだけ、とシンプルに捉えて大丈夫です!

大切なのは、制作・編集時に正しいppi設定と、用途に応じた十分なピクセル数を確保することです。

画面表示では総ピクセル数が、印刷では設定したppi値が重要になります。

ビューアソフトやOSのプロパティ表示上の「dpi」という文字に惑わされず、元データの作成設定と、そのデータが持つ意味を正しく理解しましょう。

これで、解像度に関するモヤモヤが少しでも晴れていれば幸いです!